社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
{ブルルルブルルル}
震える携帯を開き画面を見てみれば‘飯田拓斗’と表示されていて、急いでボタンを押す。
「もしもし」
『優子』
「はい」
『メール見た。で、忘れ物とはなんの事だ?』
もしかしてまだ気付いてなかったのかな?
拓斗さんは薬を忘れてしまった事を。
「薬を届けに来ました」
『薬?』
「はい。昨日拓斗さんが飲んでいた薬がリビングに置きっぱだったので」
あぁ、という声が聞こえる。
『あれは必要ないから置いてきた』
「えっ」
『あれは使う事のなかった座薬だからな』
ざ、座薬…?
『今どこに居る?』
「社長室です」