社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
『分かった』
突然、プツっと切れた電話。
「社長からですか?」
声がする方に視線を向ければ串田さんがトレーを持っていて、それに乗っているのは高そうなコーヒーカップ。
「拓斗さんが電話をしてくれました」
「もう会議は終わったようですね」
どうぞ、と丁寧にコースターの上にゆっくりと置かれたコーヒーカップ。
「ありがとうございます」
「奥様はブラックがお好きとは意外でした。それに社長は以前奥様が…」
―――ガチャ―
突然社長室の扉が開く。
社長室にノックせずに入ってこれるのは、私の知る限り一人しか居ない。
「社長、お疲れ様です」