社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「私、ボーッとしてました?」
白白しいかなぁと思いつつもそう聞いた私に、卓土さんは微かに目を見開いた気がした。
「いや、なんか心ここに在らずって感じというか。別にそんな優子ちゃんを怒ってるわけでは、見てて可愛かったし」
拓斗さんの事を考えてたのは事実。
目の前に卓土さんがいるのに私は――
「ごめんなさい」
「謝らないでいいよ」
顔の前で右手を振る卓土さんはとても困った様な顔をしている。
「卓土さんって優しいですね」
「そうかな?」
痴漢から助けてくれた時点で卓土さんは優しい人だって事が分かる。
そして、更に今日話してみて卓土さんは超絶優しい人だという事が分かった。