社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
ちゃんと聞こう、大丈夫聞こう、拓斗さんに聞こう!
気合いを入れて口を開く。
「たたたた、拓斗さん」
噛み噛みで拓斗さんを呼ぶ。
「なんだ?」
「私、拓斗さんに聞きたい事があります」
「聞きたい事?」
拓斗さんは私に視線を向けてから、お味噌汁が入ったお椀を置く。
さっきお味噌汁を作って正解だった。
お寿司のお供と言えばやっぱり温かいお茶とお味噌汁だもんね。
「怒らないで下さいね」
「それは分からない」
「え」
「まだ優子が言う内容を聞いてないからな。怒らないでと言うのは、怒らせるような内容だと優子は思ってるからだろう?」
ごもっともな言葉にぐうの音も出ない。