社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
何度も練習しても私にはお母さんの親子丼の味は出せない。
それは私だけではなく世の中の人みんなが真似しても作れないだろう。
テレビや雑誌で特集を組まれるプロの料理人が作ったってお母さんにはかなわない。
でも、きっと他の人が食べたらそんなに美味しいとは感じないと思う。
私だからそう感じるんだ。
「今日は本当にどうしたのよ」
「別に何もないよ」
疑いの眼差しでお母さんはジーッとジーッと私に視線を向けてる。
「もしかして、生活費を使っちゃったから飯田さんに内緒で援助ほしいとか?」
違うに決まってるし、こう言っちゃ悪いけど、父さんより拓斗さんの方が生活費を沢山渡してくれてるはず。
現金にクレジットカードにほらいっぱい。