社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
新聞から手をはなした拓斗さん。
その手を伸ばした先はテーブルにさっき置いた珈琲を通り抜けトーストへとたどり着く。
「えっ」
予想外の行動に思わず声が出てしまった。
だってこれは食べてくれてるって事だよね?
今なんてトーストをちぎっているし。
「優子も、座って食べたらどうだ」
「はい」
私は大きく頷いてから座る。
夜ご飯は拓斗さんと一緒に食べてるけど朝はなんだか雰囲気が違うって、拓斗さんがいつもより若く見える。
別にいつもは老けてる訳じゃなくて拓斗さんがラフな格好だからそう思うのかも。
「迷惑でしたか?」
「いや」
たった二文字だけど迷惑じゃなかったと知って安心する。