社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
気にしちゃダメダメ、なんて自分に言い聞かせるとキャベツをザクザク切る。
いつもは神経全てを注ぐのに今日はいまいち包丁に全てを注げない。
このままじゃいつ失敗するか…
「いや、気にする事ない。心配する前に自分の事を心配したらどうだ?お前はいつもいつもそれだ」
初めて恨むかも。
このマンションの構造を。
キッチンとリビングをうーんと端と端に遠ざけてくれればいいのに、なあんて建築した人から言わせれば固定電話の位置を玄関付近にすればいいと思われそうだ。
「今から行く」
――えっ。
「い…っ」
今から行くと言った拓斗さんの言葉に驚き目をこれでもかと見開いたと同時に、突然指先がジンジンと痛み出した。