社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「た、くとさん…」
「なんだ」
なんて言う拓斗さんの顔はいつも通り。
こんなにも私と顔の距離が近いのに、ポーカーフェイスのままの拓斗さんに正直イラっとしてる私がいる。
私はこんなにもドキドキしてそれはもう胸が壊れそうな勢いなのに拓斗さんは…
「――しようか」
「えっ」
「キスしようか、と聞いてる」
う、え、ちょ、ちょっと待って!
拓斗さんが今言ったキスって唇と唇が重ね合う行為の!?
日本では接吻と呼ぶあのキス?
それとも、それとは全く別で‘キス’と呼ばれるものがあるの?
{ブーッブーッブーッ}
焦る私の耳にものすんごい大きなバイブレーションが聞こえてきた。