社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「それは…」
「したくないんだろう?」
「違います違います。私、本当は拓斗さんと」
こんな事、自分の口から言う日がくるなんて。
だけど、したいと思うのは事実だから。
小さく深呼吸してから俯いていた顔をあげて拓斗さんを見る。
今なら言える気がする。
「キスしたいです!」
気合いをいれた所為かリビングいっぱいに響く。
そして、シーンッと静まるリビング。
拓斗さん、何か言ってくれないの?
私は恐る恐る片目をうっすら開くと…
「えっ」
次は片目ではなく両目で。
心ではちゃんと分かってるけど念には為にとリビング隅々まで見渡す。
「今の夢だったの…?」