社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
―――バタンッ―
玄関の扉をしめ、もたもたと靴を脱ぐ。
「なんで…!」
紐をしっかりと結んである所為でなかなか脱げないという事に全然気付かず、小さな意地で立ったまま脱ごうとする私はだんだん脱げない事に苛立ちを覚えて――
「こんな、だから」
こんなのだから…、靴もちゃんと脱げないような私だから拓斗さんに好かれなくて一方通行だけの恋しか出来ないんだ。
ポタリまたポタリと玄関の床に涙が落ちていく。
「うぅ」
身体からスッと力が抜けていき靴を脱ぐのをやめて、その場で蹲る。
見るはずだったDVDは頭から消え、涙が大粒にかわり、押さえてた声も赤ちゃんのような泣き声にかわる。