社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「駄目じゃないです。拓斗さんの言う通り拓斗さんの家だから…」
駄目だなんて思ってないし、その逆で帰ってきた事にホッとしている。
ずっと心配していたから。
「あの、一昨日と昨日は…。何処かに泊まったんですか?」
一体、拓斗さんは何をしてたんだろう。
「ホテル」
えぇっ、私の例えばが当たってたの!?
「出張先の」
出張…?
なあんだ出張してたんだ――ってそれなら教えて欲しかった。
帰宅の時間を聞いた時にちゃんと出張だって言ってほしかった。
悲しくなり俯いていると。
「怒ってるのか?」
初めて聞くような拓斗さんの低い声が耳に届いた。