社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「怒ってないです」
「怒ってるだろ」
怒ってないですよ!と視線を上げれば拓斗さんの眉間にはこれでもかと皺が寄っていて。
「拓斗さんこそ怒ってます」
私に怒ってると言うよりもまずは自分自身に聞けばどうですか?
なんて言えっこないから心の中で呟く。
「優子」
私の名前を呼んだと拓斗さんが手を伸ばし、そのまま私の手を掴んだ。
「言いたい事があるなら言ってくれ。でなければ何も分からないだろ」
それ優しい声でさっきとは大違い。
だから言いたくなった。
私が本当に思ってる思いを。
「私は待ってました。拓斗さんは帰ってくるって思ってたからずっと待っていました」