社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
最後の最後までこんな私って…
溜め息と共に涙が上がってきて視線をバッと自分の足元に向けた。
私は俯いている状態だから拓斗さんがどんな表情をしてるか分からない。
初瀬さんも串田さんの表情も。
「――優子」
ずっと黙っていた拓斗さんが私を呼ぶ。
「何を言っているんだ?」
「……」
「何を言っていると聞いてるんだ!」
なんで…?
私は拓斗さんの為になると思ったから本当は嫌なのに身を引く事を決めたのに。
「優子!」
「ごめ、んなさい」
もしかして拓斗さんのプライドを傷付けたのかな?
大事な秘書の串田さんの前でしかも飯田コーポレーション内で妻から別れを切り出されてた事で。