社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
まだまだ下の階にいるエレベーターを待っていられず隣にあった扉の押し開け、非常階段をかけおりた。
かけおりながら非常階段で良かったと思えたのは、この不細工な泣きっ面を誰かに見られないで済んでるから。
「うぅ」
一体何階まで下りてきたのか分からない階の踊り場で足を止めた。
昨日から泣いてばっかりだ。
今から私はどこに…
「―…こ」
「え」
「ゆ……、優子」
上からドタドタという音と共に拓斗さんが私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
私を追いかけてきてる…?
嬉しいなと思う気持ち半分に優しくしないでと思う気持ちも半分。
ううん。
優しくしないで!と思う方が大きかったから私はこうして走り出したんだと思う。