社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)



このままだと拓斗さんに捕まってしまうと思った私は目に入った扉を押し開けた。





―――ガチャ―





非常階段の電気は薄暗かったからか、何階か分からない階に出た瞬間に通常の電気がとても眩しく感じた。


映画館から出た時に感じる違和感のような現象と一緒の。


私は袖口でごしごし拭う。


それは眩しかった事もあるけど、周りからの視線も痛かったからで。


そりゃあそうだよね。


勤務時間に涙でぐちゃぐちゃな人が非常階段から飛び出てきたら誰だって見てしまうはず。





「ねぇ、見て」

「何があったんだろう?」





ビシビシ感じる視線に恥ずかしくなりながらも歩き続ける。


そうだ、トイレに隠れよう。


トイレはどこ…?



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