社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
私が料理を上手くなりたいと思う理由を上げればキリがないけど、今一番思うのはふたつあって一つ目は美味しいと思ってほしいから、そして二つ目よく耳にする。
男の胃袋を掴めっていう。
あれ、間違ってるっけ…?
「バシッと?」
そんな細かい事はいいとして私は拓斗さんの胃袋をはなしたくなんてない。
やっぱりこれから何十年と拓斗さんに料理を作れるんだから早い内に胃袋を掴んでおきたい。
拓斗さんが違う人にフラフラーッとしない為にもね。
―――ガチャ―
ん…?
微かにガチャって音が聞こえたような。
ようなじゃなくて聞こえたよね…?
「拓斗さん!」
私は菜箸を持ったままキッチンを飛び出した。