社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「いい、んですか?」
「何がだ?」
「料理を焦がしてしまったのに…。こっこ、こんなに良い事尽くしなんて」
失敗ばかりした私に拓斗さんは怒られるどころか良い事ばかりしてくれる。
「なら、外すか。いい事尽くしが嫌なら指輪外すか?」
どうする?と私を見下ろして聞く拓斗さん。
「外したくないです!」
これは絶対に外さない。
拓斗さんに外せと言われても左手薬指から指輪を外すものか!
この指輪の居場所はここだけなんだから。
「なら大人しく受け取っておけ」
そう言った後、拓斗さんは微かに目を細めた。
どうしよう。
これでまた夜ご飯の準備が出来なくなっていく。