社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
浴衣で歩きにくいはずなのに逆に何故かいつもより足取りが軽い気がするのは、拓斗さんの浴衣姿がもうすぐ見れるという嬉しさからだと思う。
「さっきもあの人あそこにいたよね」
「きっと待ってるんだよ。あがるのを待ってるとかイイよね〜」
女性の2人組と通りすがる時にそんな会話が聞こえてきた。
私と同じ事を考えてる人が居るんだ。
‘待ってるとかイイ’だって。
拓斗さん喜んでくれるかな?
そう思いながらこの角を曲がれば暖簾だ!と思い角を曲がると――
「えっ」
私はビックリして目を見開いた。
私の視線の先には暖簾の近くの壁に凭れ掛かっている浴衣姿の拓斗さんが居たから。
‘さっきもあの人居た’その言葉を思い出す。