社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
拓斗さんの事だったんだ…
拓斗さん!と名前を呼ぶと拓斗さんは少し驚愕したような表情になって。
「部屋に戻っていたのか」
「ごめんなさい」
いつからここで待っててくれたの?
「いや、いい」
「本当にごめんなさい…。私戻ってて」
サラッサラに乾いた拓斗さんの髪も火照ってない肌も、かなり前にお風呂からあがった事を物語ってる。
「あの、拓斗さん…!」
前を歩く拓斗さんの背中を見つめながら口を動かす。
「こんな事言っちゃ駄目だけど。私すっごく嬉しいです」
ここで私を待っていてくれた事が嬉しい。
申し訳ない気持ち以上に凄く嬉しいの――…