社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)



バフッと音が響く。


その音は私が投げた枕が拓斗さんの顔面にクリーンヒットした事を物語っている。


ど、どうしよう。


冷や汗が伝うのが分かる。





「優子」





さっきとは正反対のバクバクな心臓。





「あ、あのあのあ、の…」

「落ち着け」





怒られると思ったのに何事もなかったように拓斗さんに言われ拍子抜けしてしまう。





「言い方が悪かった」

「拓斗さん?」

「まわりくどいのは嫌いなんだが、照れくさく単刀直入に言えなかった」





困ったように眉毛を下げながらくしゃりと前髪を掻き上げる拓斗さん。


その姿は私が今まで見た事のないような、余裕なさげの拓斗さんに思わず見入ってしまう。



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