社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「すみません」
「私は大丈夫ですから」
「ほら、お姉さんにちゃんと謝りなさい」
ごめんなさい…、うるうる涙目で謝られれば誰だっていいよと言ってしまう。
まあ許すもなにもはじめから私はちっとも怒ってないんだけどね。
「ばいばい」
お母さんに抱き着く男の子は泣きながら私に手を振る。
こう言っちゃ駄目かもしれないけど、小さな子供の泣き顔は素直に可愛いと思えた。
{ブーッブーッブーッ}
携帯が震えだしてパカッと開けば待ち受けに卓土さんの文字。
ピッとボタンを押して耳に当てた。
「もしもし」
『優子ちゃん、遅くなってごめんね。とりあえず昼休み貰えたからもう平気だよ』