社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
Unrequited love 卓土side
こんなもんか。
片手でネクタイを緩めながら背広を手にし、椅子から立ち上がる。
「お先に失礼します」
「いってらっしゃい」
と、優しく俺に微笑みながら言ってくれる先輩や同期もいれば…
「はぁ〜、マジ狡いから!」
キーボードを叩きながら俺を睨むように見てくる先輩も中には居る。
「笹山先輩」
「なによ」
「目充血してますよ」
笹山香織先輩。
名前だけ見ればかなり女らしい先輩だけど、本当は男勝りで酒豪で悪口が悪くサバサバしている先輩だ。
「かわって」
「嫌です」
「後輩のくせにムカツク!も〜、早く行って早く帰ってきてよねぇ」