社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
ワンコインランチ…?
ああ、きっとあの店の事だろう。
『じゃ、そこで待ってて』
「えっ」
『ワンコインランチでしょ?』
俺が知ってる限りうちの近くでワンコインを売りにしてる店も、看板にそう書いてある店は1店舗だけ。
そこは50代半ばの夫婦が切り盛りし美味しいともっぱら噂の小さな食堂。
「はい」
『それなら優子ちゃんはそこに居て』
それだけ告げた俺は返事を待たずに携帯を切り走り出した。
営業で働いてる以上、足にはわりと自信がある俺は何を隠そう中高6年間を陸上部で長距離をし地区大会で優勝したりした。
そんな俺が優子ちゃんが待っているそこ店までの、500メートル足らずの道のりが酷く長く感じた。