社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「どうだ?」
「冷たいです」
「お湯をかける訳にはいかないからな」
浴槽の縁に私をおろしてから拓斗さんは今、私の足に冷水シャワーを当ててくれる。
皺一つないシャツもいかにも高そうなスーツも、フロアに片膝たてている所為でびっしょりと濡れてしまっている。
「ごめんなさい」
「謝る必要はない」
「ごめ、んなさい…」
痛さなんかよりもお仕事で疲れて帰ってきたばかりの拓斗さんに、迷惑をかけてしまったという事実に涙が溢れ出てくる。
あぁ、まただ。
泣いてる事でまた拓斗さんに迷惑かけている。
「痛いのか」
違う違う!と頭を横に振る。
「優子?」
「ごめ、違うんです…っ」