社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)



「どうだ?」

「冷たいです」

「お湯をかける訳にはいかないからな」





浴槽の縁に私をおろしてから拓斗さんは今、私の足に冷水シャワーを当ててくれる。


皺一つないシャツもいかにも高そうなスーツも、フロアに片膝たてている所為でびっしょりと濡れてしまっている。





「ごめんなさい」

「謝る必要はない」

「ごめ、んなさい…」





痛さなんかよりもお仕事で疲れて帰ってきたばかりの拓斗さんに、迷惑をかけてしまったという事実に涙が溢れ出てくる。


あぁ、まただ。


泣いてる事でまた拓斗さんに迷惑かけている。





「痛いのか」





違う違う!と頭を横に振る。





「優子?」

「ごめ、違うんです…っ」



< 540 / 635 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop