社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
なんて言えばいいんだろう。
頭が上手く回転せず拓斗さんに泣いてしまった理由を説明する言葉がうまくつくれない。
そんな事も悔しくなり下唇を前歯で噛みしめた。
「優子、駄目だろ?そんな事しちゃ」
噛みしめてる唇に冷たくなった拓斗さんの指が優しく触れた。
「噛みしめたら傷付く。それに、キス出来なくなる。しようと思えば出来るが痛いキスは嫌だろう?」
「……」
「そうだ。噛みしめたアトは残ったが血は出てないようだな」
唇を噛みしめるのをやめれば拓斗さんは優しくそう言い指をはなす。
「往診の連絡をしてくる」
「待って下さい…」
「優子?」
「火傷の薬なら持ってます。だから往診を頼まなくても大丈夫です」