社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)



「あの、えっと…」

「名前も言えないのか?君みたいな者が入ってきたとはうちも落ちたものだ。全く信じられんな」





ぶつかってしまったおじさんがそう言い、ふんッと鼻息を荒くし腕を組んだ。


‘うちも落ちた’


それは拓斗さんの会社の格が全体的に落ちてしまったという意味だよね?


私が拓斗さんの妻になったから飯田コーポレーションの格が落ちたんだ…





「一体、どうされました?」





――ざわざわとしていた中でそんな声がロビーにはっきりと、大きく響いた。





「丁度いい所に…。君が担当してる者に言っといてくれ」

「……」

「こんな教育も出来の悪い者を飯田に入れるのは気を付けてほしいと。もっと厳しくやらなきゃいけないね、と言っておいてくれ」



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