社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
素っ頓狂な声がオープンカフェに響く。
その声は私のもので、すみません、近くに居た人や店員さんにペコペコ頭を下げ謝った。
本当に私達は迷惑なお客さんになっている。
「ねぇ、青葉」
「んー」
「さっきのって嘘だよね?」
っていうか私の聞き違いかもしれない。
「嘘言う訳ないじゃん」
きっぱりとそう言い張った青葉はあまりの堂々さで言い返せない。
「愛の結晶ベイビー」
「ベイビー…」
「いるかもしれないよ?優子がまだ気付いていないだけで」
私のお腹にいるかもしれないと言われたら試したくなるじゃん。
ごくりと唾を飲み込みながらそーっとテーブルに置いた妊娠検査薬に手を伸ばした。