社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「それに同じく私にも。社長にそう伝えておいてくれと勢い良く仰ってたじゃないですか。さぁ、今は専務もいる事ですし、まだまだ言い足りない様なら飯田へ対する意見を言って下さい。どうぞ小沢課長補佐」
にこりと軽く微笑みながらクイッと指で眼鏡を上げた串田さん。
「君、それは本当か…?」
「で、でたらめです。串田さーん冗談キツイですよ。それにこんな小娘を奥様だなんて」
小沢さんのハハッと笑い声がロビー全体に響く。
「優子さん。本当にそう言われたの?」
「えっと、あの…」
ごめんなさいという気持ちと私の所為で格が下がったという事実に、ツンッと鼻の奥が傷む。
「ごめんなさい。って謝って済む問題じゃないですけど」