社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「本当に帰ってしまうのかしら?ああ見えて拓斗は優子さんを待っているわ」
「え」
「拓斗は照れ屋だからついああ言ってしまったと思うの。本音ではないのよ」
それでも帰ってしまうのかしら?と聞いてきたお義母さんにごめんなさいの意味も込めて頭を下げる。
「拓斗さんにああ言われたから社長室から飛び出したのは事実です」
「優子さん」
「でも、よくよく考えてみれば家事をしなくちゃいけないんです。拓斗さんが頑張って働いているとのなら、私は拓斗さんとのマンションで家事をして待ってようと思います」
だから…!
そう言った私をお義母さんは微笑みながらこう言ってくれた。
「分かったわ。タクシー乗り場の案内くらいはさせて頂戴ね――…」