社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
目をパチパチし、何度か瞬きを繰り返すと拓斗さんはいつもの顔に戻っていて。
今のは見違えなんだろうか?
さっき見た笑顔を疑ってしまう程。
「――優子」
「え、あ、呼びましたか?ボーッとしてすみません」
なにかを考えていると、周りが見えなくなり聞かなくなるのは私の悪い癖。
「体調悪いのか?」
「いえ、ただ…」
拓斗さんの笑顔を見れたから。
何て言ったら失礼かな?
そう思った私は…
「お、おおっ、美味しいなって」
違う事と思い咄嗟に出た言葉は自分で自分の料理を褒めるような言葉だった。
「確かに旨いな」
「た、くとさん」
「いや、何も言ってないが」