二人二色
『行ったら分かるさ…』

それだけ絞り出すように漏らした佑樹は黙ったまま…ゆっくりと足を進めて行った。そんな佑樹の顔を見ながらなぜか…おまじないの木…そして…幼なじみの顔が頭に浮かんだ。なぜだかは分からなかったが…。

『分かった…で?喫茶店ってどこの?』
このあたりには喫茶店が少ない。それは商店街の中に密集して有るためだ。だから今商店街から離れて行く俺達は…喫茶店に行くことは出来ないはずだ。

『俺の行き着けの場所有るんだけど…そこでいい?』

佑樹の口からそんな言葉を聞き出したのは初めてだった。こいつに行き着けの場所なんてあったのか…少ししか…友達をやって無いが少し驚いた。

『あっああ……分かった』
俺は多分少し声が上擦っていたのだろう…そんな俺を見て佑樹が少し笑った。

『やっぱ…お前と友達で良かったよ』
『え?』
俺は少し戸惑った。今まで面と向かってこんな事言われた事も無ければその相手が佑樹だったから。でも佑樹の顔を何故か見ることが出来た。
『なんてな…行くぞ!!』
佑樹はそう言い終わるとゆっくりと歩いて行った。その後に渋々俺はついて行く事にした。

夏の暑い中…頭の中は今までにない友人の事…そして…幼なじみの事。そんな事で頭を埋め尽くされて行った。
それは暑い中で…益々原型を取り戻そうとした。何故だか分からないが…リアルに頭の中に浮かび上がった。暑いのに…溶けない個体は俺の頭の中は…確かに残っていた。

しばらく歩いて行けば見慣れない街は俺の心には新鮮だった。ここらで住んでいる俺でも見たことの無い街は…静かで少し…涼しかった。
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