ゴブリン! ゴブリン!
1.戦ごっこ


 天気は春麗らかな五月の晴天。
 紫色の花が咲き乱れる美しい草原。
 ここは平和なトンガ平原。




「ごぶごぶ~」
 紅い旗印の王様が叫びを上げると、片一方のゴブリンの軍団(と言っても総勢二十かそこらなんですが)が、突撃を開始しました。


「ごっぶごぶごぶり~ん!」
 もう片方の、青い旗印のゴブリンの軍団(と言ってもこっちも総勢十五程度なんだけど)の先頭には、ホブゴブリンが数人いました。ホブゴブリンは、ゴブリンの亜種。体格はいいけれど、頭の中身はゴブリンよりお粗末。


「ごぶごぶ?! ごぶほぶりんりん!」
「ご~ぶっぶっぶっ! ごぶりんりんりん!」
 直訳しましょう。
「何いっ?! ホブゴブリンとは卑怯な!」
「わ~はっはっはっ! 勝てばいいのだよ!」
 ……と言っているんですね。


 この戦いは恒例行事。年に一度の大決戦、お祭り騒ぎの大喧嘩。
 ま~言うなれば、紅いゴブ族と、青いリン族の親交を深める為と言いますか。
 だから手に握られている武器は、この地方の特産品である、紫の染料を浸した布を巻きつけた木の棒。これを付けられたら、そのゴブリンは死んだ事になります。


 みなさん、ゴブリンだからと言って、その答えが悪者という認識は改めましょう。
 確かに鬼みたいな顔は人間離れして怖いですが、実際は人間よりも体力はないですし、頭の悪さはそれ以上ですし。実際、どんな物語でもザコキャラ扱い。
 こんな平和に呑気に生活しているゴブリン達もいるんです。


< 1 / 81 >

この作品をシェア

pagetop