ゴブリン! ゴブリン!
「僕が行きます」
二つの玉座の下座に立っていたシックス君が、突然言いました。
「とにかく、プー姫が囚われたという情報は無視できません。戦争で領土は取り戻せても、戦争ではプー姫の命は失われるだけです」
うおお、ゴブの分際ですっごいカッコイイ事を言っていますね(失礼な)。
「しかし、シックスよ。人間の村の情報は無きに等しいぞ。どう動くつもりだ?」
ゴブ五世陛下が、シックス君に問います。
「僕が最後に人間の村に侵入したのが一ヶ月前です(イタズラ)。確かに物々しく要塞化されつつありました。つまり、この行動はその頃には予定していたのでしょう」
シックス君は顎に手を当てて、考え込むような仕草をとります(何処まで考えてもゴブの脳みそなんですが)。
「最小限の精鋭で、プー姫を奪還、その後の決戦で領土の奪還、理想を言えばこれでしょう……」
実際、相互不可侵、不干渉条約を破ってまでも、ゴブリンと戦争しなければならない理由とは、一体何なのでしょう?
確かにゴブリンはよわっちいですが、戦えば少なくとも人間にも被害は出るはずですよね。そんな危険を冒してまで、領土の拡大を狙ってきました。
「シックス、ちょっと……」
シックス君の背後から、チークンが姿を見せました。
白のローブが姿は、チークンのトレードマーク。シックス君は、喧々諤々の議論を交わしている、リン王とゴブ五世陛下を後にして、チークンと共に謁見室から出ました。