ゴブリン! ゴブリン!


「……精霊に偵察に行かせた。少なく見積もってもリン王の領土に二十、人間の村には八十を超える人間の兵士がいる。どうも人間で言う『傭兵』って奴だな」
「『傭兵』? あの金で戦う兵士の事か?」


 チークンの言葉に、シックス君は顔を顰めます。
 ゴブリン族に金で戦う汚い傭兵なんて制度はありません。
 みんな、国の為になら、命懸けで戦います(ゴブリンと人間―どっちが野蛮ですかね?)。


 紅いゴブ族の王宮の、シックス君の私室。
 ここはシックス君とチークン、そしてラムラムが悪巧みを企む部屋でもあります。


「問題は、やはりプー姫だな。今、彼女を楯に降伏勧告でもされたら、厄介だ」
 ラムラムは自分の刀の刀身を眺めつつ、それを手拭で拭きながら、そう呟きました。
 シックス君は椅子に、チークンはその隣に立っています。そしてラムラムはシックス君のベッドに座っていました。


「領土獲得が目的にしては、やり方が上手くないな」
 シックス君がそう呟きました。


 一見して、お祭り戦争ごっこで兵力の少ないリン王の領土を切り取るのは正しいでしょうが、その残存兵力は全て紅いゴブ族の領土に存在しています。


 もし領土獲得が目的だとしたちら、人間の総兵力百で討伐に来た方が、後腐れなくリン王、そしてゴブ五世陛下の領土を併合できたはず。
 ぎしり、とシックス君が座っている椅子が鳴きました。

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