ゴブリン! ゴブリン!


 紅いゴブ族の先頭には、彼らの中の王子様が突っ走っていました。
 ゴブリンの中ではかなりの美形です(いや、私にはゴブリンの審美眼はないので分からないのですが)。


 そして一族で最強の名前を欲しいがままにしている、今年成人ゴブ族正統後継者「ゴブ六世」君。通称シックス君です。


 皮製の綺麗な鎧と円盾は、人間から買った高価なもの(単純に高く売り付けられています)。腰に差してある古びた剣は、彼がゴブ族正当後継者である証でもある剣(柄に「これは見本です」とエルフ語で書いてあります)。この剣はゴブ一世陛下が、この地方のこの草原の騒乱を平定した際に、人間より贈られたとされる剣です。


「ごぶ、ごぶりん! ほぶごぶりんのユルごぶごぶ、ごぶごぶ~!」
 訳すると「みんな、聞け!ホブゴブリンの頭はユルいぞ、引くな~!」です。
 彼を先頭にして、ゴブ族の戦士達は、木の棒を振り回しつつ突撃します。


「ご~ぶ! ごぶほぶ、ごぶごぶ~!」
 青いリン族の王様は、冷静にホブゴブリンを前面に押し出して、シックス君の突撃を食い止めようとしました。
 ちなみに「よ~し!ホブゴブリン、前進だあ!」と言っています。


「リンごぶ! ごぶごぶナリ!」
「ごぶ?! ごぶごぶごぶ!」
 はい、訳しましょうね。


「リン王! 愚かなり!」
 とシックス君が叫んで。


「ナニ?! 生意気な!」
 とリン王が叫び返したんですね。


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