ゴブリン! ゴブリン!


 プー姫はとにかく行動しようと思いました(思っただけ偉いです)。
 まず、扉の向こうの気配を探ります。どうも人間が何人かいそうです。証拠に話し声が幾つかしています。


 プー姫は続けて、扉に手を掛けます。
 静かにノブを回しますが、やはり鍵が掛かっているらしく、扉は開きません。
 手癖の悪いプー姫は、素早く懐に手を入れて、胸の谷間から金属製のハリガネを取り出します。


 で、素早くピッキング。
 きり、きり、きり、かちゃん。
 ……開いちゃったよ、マジで……。


 鍵は開いたらしいですね(いや、ピッキングできる姫様って一体……?)。
 軽く押してみます。


 ですが、扉は開きません。どうも閂でも掛けられているのでしょう。


 不安に駆られて視線を泳がせていると(ゴブなので可愛くはありませんが)、扉の向こうでガタガタと音がしました。
 そして鍵が「かちゃん」と音を立てます。


「にん? にんげんげんげん?」
 痩せこけた、あの精霊術師の声がします。
 どうやら、「鍵を掛けていなかったのか?」とでも尋ねているのでしょう。プー姫は慌てた様子で、胸の谷間にハリガネを隠します。


「にんにん! げんげん!」
 多分、「いえ!掛けていましたよ!」とでも、見張りが応えているのでしょう。
 人間達がナニやら言葉のやり取りをしているので、プー姫は部屋の奥に向かい、落ち込んだ様子で座り込みました。


 実はこれ、演技です。
 確かにペーコちゃんの事、連れて行かれたゴブ達の事、お父さんであるリン王の事、自分の事、そして大好きなシックス君の事。色々な心配があります。不安なのも仕方がないです。
 でも、だからと言って下を向いて黙っていたら、プー姫らしくないでしょう。


 だから、演技でもして、少しでも自分の状況を良くしたいのが、プー姫の本音です。


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