ゴブリン! ゴブリン!


「しかし……」
 シックス君は思案げに、視線をリン族の居住区に向けました。シックス君から見て、この居住区は絶対的に変なのです。


 何故か――?


 略奪の跡が、全く見受けられないのです。
 もしも、これが完全な侵略戦争だとしましょう。だとしたらまず、この青いリン族の王宮、居住区は人間によって略奪されているのが普通です。
 ですが、青いリン族の居住区は全く荒らされていません。


(――? 待てよ……もしもこれが侵略戦争ではなかったとしたら?最初からこの戦争は――)
 そうです、この戦争は――


「……プー姫がさらわれている以上、プー姫が何か関わっているのは確実のはずだ。ではプー姫は人間の何に関わったんだろう?」
「……お前、プー姫の為なら、命を捨てる覚悟だろう?」
「そんな事を、俺達が許す訳ないだろう?」
 ギクリとしたシックス君に、ラムラムとチークンが真剣な表情を向けました(これで変態コスチュームじゃなかったら、カッコイイんですが)。


 シックス君はギクリとした後に、「ふっ」と溜息をつきました。


「分かっているさ、僕の役割は、このトンガ草原の統一だ。千年続く王国の樹立なんだ。簡単には死ねないし、死なないさ」
 チークンとラムラムは、シックス君の肩を叩きました。
 「死ぬ事すら許されない立場」というものを、みなさんは理解されていますか?


 人間にもゴブにだって、そんな立場の存在がいます。


 シックス君はそんな立場なのです。
 そしてそのトンガ草原の統一、千年王国の樹立という夢と、同じ趣味(下着ドロです)に惹かれて、ラムラムとチークンはシックス君と共に行動しているのです。


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