ゴブリン! ゴブリン!
8.ゴブだって愛に生きるんだい
さて、その頃プー姫は、部屋の片隅で膝を抱えながら、シックス君の事を考えていました。
シックス君と初めて逢った時、プー姫は恥ずかしくて話すらできませんでした。
それはシックス君も同じだったように感じています。だって、シックス君も赤面していましたし(でもゴブです)。
この二人の出逢いは、ある意味でシックス君の素養を見込んでいたリン王と、ゴブ五世陛下の間の密約だったのです。
才覚に満ちていたシックス君なら、もう一度紅いゴブ族と青いリン族を統一する事も可能だと踏んでいたのです。
プー姫は、木に塞がれた窓から滲む朝焼けの光に、視線を向けました。
(――そうだわさ……私とシックスが初めて逢った時も、こんな朝焼けだっただわさ)
夜更けに痩せぎすエロ親父(冤罪)精霊術師に脅されて、凄く不安だったのですが、時間が経つにつれて、一般ゴブ達の事、ペーコちゃんの事、父親であるリン王の事と、一つずつ不安感が薄れていき、結局最後に辿り着いたのは、「きっとシックスが助けてくれる」という、何の根拠もない純粋な心でした。
(……そうだわさ。だって、シックスは紅いゴブ族の王子様だわさ……助けに来てくれるはずがないのに……)
しゅん、となってしまうプー姫です。
落ち込んでしまうのですが、心の何処かでやっぱりシックス君を信じているプー姫でもあるのです。
出逢った時、本当に大好きになっちゃったのはお互い様。でもお互いの気持ちなんて気付いていません。
「……シックス」
声に出して呼んでみました。もしかしたら、扉の向こうで「迎えに来たよ、プー姫」的展開を、ちょっとだけ期待して――