ゴブリン! ゴブリン!
11.王の決断
「ゴブ陛下! リン族の老ゴブ、子供ゴブが逃げてまいりました!」
陛下――ここではゴブ五世陛下の愛称である「陛下」と呼ばせて頂きます――は、リン王と共に、王宮で紅いゴブ族と青いリン族の統合軍の編成に追われていました。
そこに、シックス君の解放した老ゴブ、子供ゴブ達が到着した事を、兵士が報告したんですね。
「何と! シックスめやりおったか!」
シックス君の手腕には、実の親である陛下も良く驚かされていました。ただ、実際にこの結果だけを考えてみると、物凄い結果をもたらしています。
「はっ、して陛下に老ゴブの代表がお会いしたい、と。今回の侵攻の隠された真実を、シックス殿下から託された、と申しております」
その言葉に、陛下は驚きを隠せません。
確かに兵士は「今回の侵攻の隠された真実」と言いました。
「よし、急いで通せ」
「はっ」
兵士は一礼して、王宮の広間から出て行きました。
リン王はその陛下に対して、こう言葉を掛けます。
「シックス君はさすがですな」
対して陛下は頭を掻きながら、リン王に向かって呆れ返った視線を向けます。
「王族ならばこそ、とも思いますが、王族は後方で的確な指示を出すべきはず。今回の行動とて、褒められたものではありませんわ」
二人は広間にあつらえられた、二つの玉座に腰を下ろしています。
小さい頃のシックス君を見たゴブ達は、一様にこう言いました。
「わんぱく小僧」だと。今の落ち着いた(?)シックス君からは(ある意味)想像もつかないくらいに利発的で、とにかくわんぱく小僧でした。