ゴブリン! ゴブリン!
そう――
シックス君とラムラム、チークンは既に人間の村に向かっています。この金縁の本がなければ、プー姫は絶対に助かりません。
「リン王、出立いたしましょう」
陛下が立ち上がりました。八十という強大な戦力は正直、ゴブリン三十とホブゴブリン五では相手にならないかもしれません。ですが、今ここでこうしていたとしてもプー姫は助かりません。
そして人間達の騒乱に、自分達が巻き込まれては、たまったものではありません。
「老ゴブ、ご苦労だった。皆と共に休まれよ。私とリン王、そして統合軍は、人間の村に対して、侵攻を開始する」
リン王がねぎらいの言葉を掛け、そして玉座から立ち上がりました。
「お待ち下さい。あの本はそれだけではありません。別の意図も隠れております」
老ゴブの言葉に、両陛下の動きが止まりました。訝しげに見詰める両陛下に、老ゴブは「ぷっ」と笑いながらこう言いました。
「血判状の後には、持ち主のオリジナルエロ小説(ヲイヲイ)と、ラヴラヴポエム集(ヲイヲイヲイ)と、失恋の悲しみ日記(カワイソー←ヲイヲイヲイヲイ)が綴られていました」
「で、出来は?」
「ぷーっ、思い出させないで下さいよ~、笑いが止まらなくなりますゆえ……」
両陛下は互いの顔を見合わせて、にやっと笑いました。
そうです、これは使えるんです。このトンガ平原を巻き込んだ騒乱に終止符を打つ事ができるんです。
二人の国王はこの謁見の後、すぐに全軍を率いて、人間の村に向かって進撃を開始しました。決戦の時は間近でした。