ゴブリン! ゴブリン!


 一時待っていると、正門が軋みながら開かれて、中から藍色のローブを纏った、痩せこけた青年が現れました。そしてゴブリン語で唐突にこう言います。


「本を返すベ。そしたら、ゴブ達は解放するべ」
「逆だな。少なくともプー姫の解放が最優先だ。できないのなら本は返さないし、内容も暴露する」
「立場を理解していないべ? お姫様が殺されてもいいべか?」
「立場を理解していないのはどちらだ?血判状と、オリジナルエロ小説と、ラヴラヴポエム集と、失恋の悲しみ日記を発表されたいのか?」


 キッ。
 睨み合うシックス君と痩せぎす(中略)精霊術師の言葉は平行線です。


「オマエの事は、痩せぎす変態(エロ小説の内容から確定)サド(これもエロ小説から確定)エロ親父(これも確定ですね)地獄詩人(ラヴラヴポエム集の内容から確定)渚に誘われたセンチメンタルジャーニー(失恋日記から確定)精霊術師と呼ぼう(長えよ)」
「五月蝿いべ!」
 痩せぎす変態(確定)サド(確定)エロ親父(確定)地獄詩人(確定)渚に誘われたセンチメンタルジャーニー(確定)精霊術師は、歪な杖をビッとシックス君に突き出して、怒りのままにこう宣言しました。


――それこそが、シックス君の思惑だとも知らずに――


「一騎討ちで勝負だべ! 負けた方が勝った方の条件を飲むんだべ!」
 痩せぎす変態(確定)サド(確定)エロ親父(確定)地獄詩人(確定)渚に誘われたセンチメンタルジャーニー(確定)精霊術師は、精霊術師です。接近戦には弱いはずですが、相手はゴブリンです。痩せぎす(また面倒だから中略っと)精霊術師とシックス君との体格差が頭三つ分くらいあります。まともな勝負では、シックス君に勝ち目がないでしょう。


「じゃあ、エール酒一気飲み大会で勝負だ!」
「よかろう! ……て、ヲイマテェッ?!」
 シックス君の誘導に、思わずノリと勢いで「よかろう!」とか言っちゃいましたけれど、何故ここで一気飲み大会に発展するのでしょうね? 確かに「ヲイマテ」です。


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