ゴブリン! ゴブリン!
その時でした。
「見届け人なら、俺達がなろう」
ゴブリンの声が、ステージの上空からしました。その声の主は、白亜のローブを身に纏っています。
そう――
チークンです。
しかし、「俺達」と言っている以上、一人ではありません。緑色のローブを身に纏い、手に歪な形をした杖を持った、初老の男が一緒に飛んでいます。
男は瞳の色がヘイゼルで、何者をも屈服させるような雰囲気を持っています。特徴的なのは、左頬の深い切り傷でしょうか?
「――! に、にんにんげんげん……リクスター・ド・アスカリア!」
「に、にんにんげん!」
「逃げドロン!」
初老の男の姿を確認した傭兵達が、一斉に逃げようとしました。
「にん! にんげんげんにん! スタン!」
初老の男が短く呪文を唱えて、杖を振ると、逃げようとした傭兵達は全員気絶してしまいました。
「にんげん! 天網恢恢、疎にして漏らさず! にんげんなり!」
気絶していない傭兵達、そしてこの村の住民達に対して、初老の男は断言しました。
初老の男はチークンと共に、ついーっとシックス君の隣に着地しました。
そしてシックス君に晴れやかな笑顔を向けて、手を差し出しました。