閃火高遠乱舞

 ここでは話し難いだろうと言うことで、三人は移動する。
場所はホテル。
近くにコロンビア城があるが、さすがに入れるようなことはしない。
「一部屋借りるぞ」
「お泊りはいかがなさいますか?」
「不要だ」
「かしこまりました」
 さらさらと紡がれる言葉の断片を耳に挟みながら、二人は辺りをキョロキョロする。
豪華だ。
あちこちが、目がチカチカするくらいに眩しい。
 言うまでもなく、アメリカ国内最高級のホテルだ。
「何をしている?さっさと行くぞ」
 スタスタとエレベーターに向かっていくアダリーを、二人はついていくことしかできない。
「…さすがは王子殿下ですね」
「凡人の俺には真似できないね」
 全く気負った様子のないアダリーに、二人は感嘆を漏らす。
ポカンとした様はどことなく似通っていた。
 アダリーと共にエレベーターに乗れば、当然の如く上る先は最上階。
完璧スイートだ。
たかが話をするだけでいくらかかっているのか、考えただけで頭が痛くなってくる。
「こちらになります。ごゆっくりどうぞ」
「ああ。…入れ」
「は、はい」
「お邪魔しまーす…」
 困惑でいっぱいの表情をした二人を押し込んでしまうと、アダリーはさっさとドアを閉める。
オートロックのため、これで人は入ってはこられない。
 三人は備え付けのソファーにそれぞれ腰を落ち着かせた。




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