甘い花
ある日僕らは気が付いた。
道端に咲いている、とある花が、
とても美味しそうな匂いを放っている事に。
その花はいつかに見た、
蜜の甘いらしい花だった。
そして口にした誰かが、
匂いのままに、甘いのだと気が付いた。
いつしか人は、
その花の蜜だけを飲むようになった。
それまで何を食べて生きてきたのか、
それすらも忘れるほどに、
蜜は甘く、体に浸み込んでいった。
何もかもを忘れさせる、甘美な味。
それに夢中になるあまり、
殆どの人々は気が付けなかった。