甘い花

これにも確とした理由は無かったけれど、
幼馴染は花になってしまったのだと、
僕はそう思った。

だからその花を、
掘り返して、鉢に植えた。


そうして、いつぶりだか解らない、
自分たちの家へと帰ってきた。


僕の家にも、この家にも人影は無く。

代わりに花が、たくさん咲いていた。


花はひたすら増え続けている。


人が花を摘み、蜜を吸い、
残りを捨てると、その土からすぐに、
新しい花が咲いていく。

そこで咲いた花を手に取る人がいれば、
違う場所へと歩いて、
他の花の蜜を吸い始める人もいた。


人がいなくなる事に気が付くと、
そんな様子が目につくようになった。


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