ブラッククロス
波紋が動いている。






何かわからないけど…。嫌な予感がした。
とにかく走る。走らなくては行けない。





何かがやってくる…。





足元から黒い何かが無数にのびて絡みついてくる。





「マリー…。」






振り返るとノアがいた。





「着いたぞ。」





「えっ?」






そこは馬車の中だった。
馬車の外は誰もいない。





「城には強力な結界があるのだ。」





言ってることがわからない。





馬車の前にいるはずの馬がいない。





叫ぶのを手で押さえた。
ひいてるのは骸骨…。たぶん竜?みたいな長い尾のある骸骨。





「気をつけろ。ここからはさっきも言ったが誰とも話すな。俺から離れるな。わかったな?」





頷き片腕に抱かれたまま城の門を潜る。






誰もいないエントランス…。なんて思ってたらぷよぷよと浮かんでいる靄がいた。





頭を下げた霞のようなヘルハウンド…。なんて大きいのかしら。
声を出さない方が難しいと思った。幽霊?骸骨?
叫ぶ要素満載の城の中。しかもエントランスでこれじゃ…。





不安でノアを見上げた。ノアは前を見ている。何処か愉しげだけど目が爛々と何か探している…。




獲物は何処だと言わんばかり…。






カツカツカツ…。響く足音と長い廊下に豪華な装飾品。





見たことないものばかり。




何かありそうで…。ノアについ張り付いてしまう。嬉しそうにマントの中に隠している。





きっと私は一瞬で喰われて終わるかも…。この魔の巣窟で。





今更恐いとは言えなかった。
失うものは何もなくなったのに。





一つの部屋に着いた。





カチャ!





「もういいぞ。」





そう言うといきなりベッドに放り投げる。
「きゃっ!」






鎖骨から胸元に手を滑らせる。
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