ブラッククロス
「ネージュ…。」






その声は氷を溶かすように凛とした声だった。
魂に呼びかけられているように…。震えた…。
この玉座に座るまで。






青い一輪の薔薇…。






私の…。月を見つけた。
それは…闇の世界を知りたいと言った。






心を氷のように保つ訓練に魔力の使い方を学ばなければならない。
それは…。王家の血を継ぐ者の使命。





全てのバンパイアがひれ伏す。
闇の世界に君臨するものの運命。





いつも訓練後に決まって行く。水場が憩いの逃げ場…。
そこにそれはいつの間にかいた。
何度殺してしまうかと思ったことか。
私の中に入って来るなと!





それは…。静かに泣いていた。
悪戯に魔力を使って…。氷の蝶を飛ばす。
涙が凍るとパラパラと床に転がった。






一瞬驚き、此方を見つめたそれは笑っていた。
微笑んだそれは…。






「ありがとう…。」






そう言った…。






「礼を言われることはしていない。」
悪戯にしてみたことが礼を言われるなど…。






「私は…。嬉しかったの。気が紛れて。」






それは…。物怖じもせず私を見つめていた。
「私は…。ローズよ。」





「人間か…。」
顎を持ち上げてアイスブルーの瞳を…。






「綺麗な目をしてるのね。」





暗示が効かない…。






「貴方のことは少し知ってる。ネージュ…。」






ただの餌ではない。






「お前は…。」






「ブルーローズよ。ローズと呼んで…。」






極上の香り…。





「ローズ…。」





それは…。私を物怖じしない。私をネージュと呼ぶ…。





魔力を持っている人など…。
虫けらが…。






振動させる声は氷を震わせる。





遊んでやろう…。
その身を凍てつかせてやる。






魔女と氷の貴公子は出逢った。
雪明かりのように…。






炎の指揮者はまだ知らない。






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