ブラッククロス
窓を割り、噴水の下に降り立つ。
目的のものはそこにある。





「ネージュ!何処から来たの?」





そう…。もうそれだけを欲す。





ただならぬ様子を感じ後退る。
「ネージュ?…。」






これまでの短い時間は遊びに過ぎない。





膨大な冷気に氷の結界が作られ噴水は時を止めた。回りにいた生き物さえも動かない。





ただひとつだけ残った居場所さえ、玉座さえもないなら。





「ローズ…。」





銀の結界を作り出すも間に合わない。






「お前が悪い…。」





体を凍てつかせ身動きを封じる。
そう…。その心の音を止めよう。





「僕だけのものに…。」





玉座にいることが生きる糧だった。
それがないなら…。





母は…。きっと玉座に座れと言った…。
愛は時に残酷だ…。
重い鎖のように。
私を…。僕を縛りつけて離さない。






「ローズ…。」






魔力の相性がいい…。





人間が魔力を持っている…。そう…。お前だけ。





青いくちびるが震えながら言う。
「ネージュ。」





凛とした声だった。





「ダメよ私は…。」





首を狙う。






心の音を止めよう。
僕にその心臓を…。
甘い甘い香り…。囁く音を僕に…。






炎に包まれる。
「!」






青い炎が時間を進めていく。





開放する魔力…。






姿を見た。
赤く燃え上がる遺骸。
呪われたバンパイア…。





「王がこんなところで何をしに?ノア…。」






骸骨の指から炎が放たれた。
魔女は燃え上がる。






「私のものだ。」






氷の結晶が壊れて消えた。





魔女が倒れる瞬間。別のバンパイアが支えていた。






「グラス…。地下に連れていけ。」





「はい…。ノア様。」






薔薇は骸骨に抱かれて消えていく。






手には銀の手錠…。






「大人しくされていますね。」






「嫌味か?誰かに似ている…。」






冷たい錠前の音が響いた。





格子越しのバンパイアが言う。
「冷静な方とお見受けしていましたが案外激情型なのですね?」






苦笑しながら言う。






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