ブラッククロス
「やぁ…。嬢ちゃん。それはこっちの台詞だぜ。あんた…。何者だ!」





ナイフが襲う。






「馬鹿!止めとけ!」
一人が止める。





「鬼火…。あれは悪魔か魔女の仕業だ…。」






恐れおののく男達…。






「うーん、あってるようなあってないような…。」





冷静な少女。何処か抜けているような…。





「ふざけるな!」
叫び切れた男のナイフが目の前に。





兄妹に覆い被さる少女。





「ぐああああ!」






断末魔の悲鳴が森にこだまする。
黄緑色の炎が男を包んでいた。





黄緑色から青い炎に変わる。
倒れた男の後ろに黒い影…。





「ひぃ!化け物!」






そう叫び男達が逃げ去る。少女が一瞬悲しい顔をしたのを兄は見た。





黄緑色の炎が森に吸い込まれ静寂になる。





「お姉ちゃん?」






「大丈夫?私はソワレ。この人はノアだよ。」





「ありがとう!」
妹が抱きついていた。





「お家どこ?」





指差す妹。それを見たソワレは叫んだ。
「リュビー!」






バサバサと音が響いた。





兄妹は驚いて声が出なかった。





「リュビ。乗せてくれる?」




何処からか飛んできた見たことのない生き物。
骨皮の天馬は頭を下げた。





「ありがとう!」






ソワレに促され乗る兄妹。
太陽は沈み、変わりに夜の女王、月が出ていた。




空には黒いシルエット、言い伝えの天馬が走り抜ける。





兄妹は家の扉に手を伸ばし振り返る。





「ありが…。あれ?」






そこには何もない。
暗い森が見えるだけ。






中に入ると心配した両親に抱きついた。





パタンと扉が閉まる。






「よかった。」






「…。」






「怒ってる?ノア?」






「お前が…。勝手に飛び出すからだ。」






「だって声が聞こえたんだもの。」






顎を持ち上げ見つめる。





「ノア?」






優しく口づけて激しく求められる。
されるがままに少女は身を委ねた。





「ノアが来ると思ったから…。」





「!」





物怖じしない少女は凛とした声で言う。





「お前が…。悪い。」
それがスイッチ。止まらない。
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