ブラッククロス
庭に舞い降りた。





「ありがとう。また乗せてね。」





頭を垂れた後、骨皮の生き物は何処かに去っていく。





「あれはなんていう生き物?」




グラスは首を捻りながら…。




「私どもはあの種をスキニと呼んでいます。」





「あの子に名前はある?」




「いえ…。ありません。」




「私が付けたらダメかな…。」





「利口な種ですから…。」




困っているような仕草をする…。





「マリー様を気に入ったようですから…。」




それを了承と取り…。
「ありがとう!」




グラスはニコニコしていた。




名前はマリーにとって大事なことだった。




家族の証であり、初めてのプレゼントだから。





テラスに戻ると美味しそうなトーストや卵が用意されていた。





「いつの間に…。」





「執事は常に何か気にかけているものです。」





ニッコリとミルクティーを注いでくれた。




そして、耳元に…。




「もう少し肥らせるようにとノア様より。」





「!」





カップを落としそうになり、耳まで真っ赤になっていると思いながら…。聞こえないふりをした。




クスリと笑う。グラスは綺麗だ。





ここの住人は皆綺麗で…。私は…やっぱり違うのかな。





「マリー様?」





「凄く美味しい。ありがとう。私も今度何か作りたい。あっ、ノアは何が好きなのかな?」





「それはやはり…。」





口にしてからはっとした。聞かずとも答えは一つ…。





「人間と同じように食べることもできます。ですが欠かせないのは赤い血が必要です。ノア様の場合…。マリー様…。貴方だけかと。」





「私だけ?」





「貴女の香りは特別な香り…。」





ごくりと喉が動いた。





「もちろん私どもにも…。ですが貴女はノア様の相手と。ですから下手に手は出せません。殺されますから。」





ニッコリと恐いことをやっぱりさらっと…。





「ごめんなさい…。」





「貴女が謝ることではありません…。」





頭に手をおき、見つめるグラスに見惚れた。





キュッと手を握られる。




「グラス?」





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